2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

深夜二時に於ける分水嶺

或る夏の記憶である。年齢も性格も何もかもが違う。職場が同じと言う共通点のみで四人は集まり、終電を逃し、花火をした。うち一人は翌日に引っ越しを控えていた。 もう四人で集まることはないという予感の元「また集まろうね」だとか「もっと早く集まれば良…

中央線快速東京行き

麗らかな日和に誘われ東京行きの電車に乗り込こむ四月。前日の豪雨に見舞われ、桜の散った春を眺め、「四月は最も残酷な月」という古来の詩人の言葉を思い浮かべた。 私は左端の席を確保し、隣に女子高生が座っている。彼女のリュックにはストラップが三つ。…

宮川に抛つ

ある男が安い居酒屋を見つけたと言って私をサイゼリヤに連れて行った。 男は明日世界が終わるかのような勢いで、浴びるように鯨飲する。事実、手元の見当が狂って服は酒塗れである。私は店員に謝りながら店を出た。会計は二万を超えて、全く安くなかった。 …

東京都庁

私が無職のころ、友人と都庁に登ったことがある。東京タワーも高尾山も梅田タワーも一緒に登った。無論、スカイツリーもいずれ登るだろう。彼はとにかく高い所が好きで、私は高いところが嫌いだった。 彼は東京の街を見下ろして、昨夜飲みに行った街や、自宅…