ラッパー風情

あのね、ラップバトルを初めて目撃したの、腹中の液体を揺らす爆音、三秒に一度眼球を突き刺すミラーボール、微差ほどの個性をビートに乗せて口語で殴り合う超男性。八小節のラップの応酬に既視感、何かに似ていると思案すると、それは私が人を傷つけようとするときの文章の組み立て方によく似ていた、野卑で即物的で悪意に満ち満ちていた、気がつくと沸くハコの中で俺より目立ちやがってと微動だにせず睨み上げた、が惨敗だった、敵わないと思った、修辞の選び方も熱量も愚かさも何もかもが劣後していた