第六稿

楕円のピアスが髪から覗いた。私がピアスに触れると俺金属アレルギーだから長く付けてられないんだけどね、と恥ずかしそう目を逸らした。人間がいつ絶望するか知ってる?やる前からそれが出来ないことだと解る瞬間に絶望するんだよ。色弱は警察になれない、宇宙飛行士にもパイロットにもなれない。色弱の悲劇は赤信号で車に轢かれることじゃない。咽喉の奥のから手が出るほど欲しいものが絶対に手に入らないものだと識る瞬間に、何かが始まる前にお前は終わってると言われたときに絶望するんだよ。勃起不全でイップスだと通告を受けるような不全感に絶望する、喫茶店に行こう、そんで一番でかいパフェ頼もうよ。そう言って私の腕をひいて店を出た。一人で歩けるよ、そういうと先輩はそうか悪かったと腕を離した。ナツキはどれにする?下の名前で呼ばないで。私は先輩の無神経さが嫌いだ、でも同じくらいその無神経さが好きでもある。欠点で人を愛するなんて馬鹿げている